SIG-Indie5 ノベルゲーム制作実践テクニック
1/23 に行われた研究会のメモ兼レポ。
内容的には前回と変わらず、「ゲームを完成させるにはどうするか」「多人数プロジェクト運営のコツ」「創作活動を続けるには」などの講演が多くて、ノベルゲーに特化しているというほどでもなかった。畑違いの人でもそれなりに楽しめたんじゃないかな。
ひとつだけ宣伝に終始している講演があって、これにはかなりうんざりさせられたけどね。
あと、前回のノベル回であれだけ居た学生がほとんど居なくなっていたのは残念だったな。同人ソフト界はおっさんばかりになっている気が。
そうそう。次回 SIG-Indie6「同人ゲームシューティングの潮流」が2/20 に行われるらしいです。
ついに動的ゲームがテーマの研究会が行われるということで楽しみだ
萌と鬱 -PCゲームライターの一例-
- 早狩武志 氏の講演
- LIFE・SYSTEM
- http://www.tt.rim.or.jp/~hayakari/
- 大人向けPCノベルゲームを作っている
- 企画・原案・シナリオの全てを担当。契約方式は外注
- ペイライン5000前後
- 3年も拘束して作品を作ったら、普通は予算規模「中」では済まない
- 3000〜4000の売り上げしかとれない企業が多く、2000程度をペイラインとしているところも多い
- シナリオはこの部分いくらの単価で成立。期間は支払いにあまり関係ない
開発の経緯・きっかけ
- ライターとして企画・原案を提示
- きっかけは偶然知り合った会社代表への文章系同人誌のもちこみ
- いくらすばらしい企画でも、初めて持ち込んだ企画ではなかなか通らない
- 現在のゲームは、1.5MB, 2MBは最低ライン。だいたい文庫本8〜10冊分
- 企画はすばらしくても、こいつちゃんと書ききれるのか?という話に
- シナリオライターの仕事には大きく分けて2パターン
- 企画・原案からライターが担当する場合
- メーカーの企画に沿って文章だけ書く場合
- 後者の方が多い。あえぎ声とかは簡単にバイト数を稼げる
- 他社のゲームのエロシーンをカットアンドペーストしてぐちゃぐちゃに書き直して済ませることは、不可能ではない
商業ベースでゲームを作って良いこと悪いこと
- 萌(良いこと)
- 文章が書ける。楽しい
- 感想が聞ける。
- 無反応が一番辛い。叩いてくれるのは嬉しい
- 絵・声・音楽がつく
- 鬱(悪いこと)
- 原稿を書く義務が生じる
- ギャラがちゃんと貰えるかどうか心配だった
- 叩かれる
- 昔はわざわざハガキを書く労力が必要だったが、今はブログで簡単に感想が書ける
- 実力の無さを思い知る
- 時間がなくなる
- 原稿を書く義務が生じる
続けていくために、自分が意識していること
(自分の場合なのであまり鵜呑みにしないで!)
- 書きたいことしか書かない
- 黒い欲求を自覚する
- 他者に評価されたい、
- 金銭はモチベーションにならない
- 無理はしない
- 読めない
結果として生じること
- 萌であったものが鬱へと逆転する
- 文章書くのが楽しかったはずが、だんだん日常に、義務になってくる
- 文章書くのが楽しいのではなく、文章を書かないことが不安になってきて、物語を作らない者はダメ人間に思えてくる
- 自分が作りたいゲームを他人が作らないことが不愉快になってくる
これから物語を作ってみたい人へ、個人的な経験則(あくまで自分の場合です)
- 感想と意見は区別する
- 「ヒロインがかわいくない」これは感想。参考にしてもいい
- 「ヒロインをかわいくしろ」これは別。ヒロインがかわいくないのが問題なのかもしれないし、他のキャラがかわいすぎるのが問題なのかもしれない。それ以外の問題があるのかもしれない。
- 自分より下手な人の意見を聞くと下手になる
- 質より量。量を書いているうちに、結果的に上手くなる
- 3ページ5ページを1日かけて推敲したいと思うだろうけどやめたほうがいいです
- 欠点は直さない
- 欠点が三〇点、長所が70点だとして、欠点を60点くらいまで上げようとすると、欠点を直すことに集中していて長所が落ちてくる
- 結果的に、平均点が70点ということになる。こうなると評価して貰えなくなってくる
- プロモーションは不要
- ゲーム全体に関しては必要だが、シナリオライターとして活動したい人にとっては不要
- 世の中には、面白い作品を求めている人が多く、面白い者をつくれば認めて貰える。認めて貰えない場合はそれはつまらないということ
- 同人の世界でよく見たのは、つまらない作品をプロモーションで売ってしまう状況。これが続くと「同人つまんない」ということになって悪影響
- 他人が諦めるまで書く
- 10代で活動を初めて、30までやってる人はごく一部
- 自分の経験則を見つける
- 自分がここまで言ったことを鵜呑みにしてはだめ
- 自分も若い頃から色々な方法論を聞いて勉強してきたが、ほとんど役に立たなかった
- 他人の話を素直に聞かないような性格のほうが良いと思う。
- 面白い話を書くようなライターに限って嫌なやつで、他人の言うことなんか耳を貸さない。こういう人が業界で生き残っていく
ノベルゲームを長期間作るためのコツ(モチベーションの保ち方など)
- 葉山こよーて氏、ぬい氏の講演
- れいんどっぐ
- http://rain-dog.net
シナリオ編(葉山こよーて氏)
- モチベーションに波を作ってしまうと完成まで持たない
- ゲーム制作には、瞬発力より持続力が求められる
- プロットを作らないことには、全体の労力が見えてこない
- 自分の場合、プロットの段階で、主要キャラは決めておく
- 1日10行書くことを心に決めて書く。10行でやめてもいいと思って書く
- すると大体の場合、ほとんど10行で終わらない
- 発売された時のことをイメージしてモチベーションを上げる
- 自分へのご褒美。旅行(聖地巡礼)に行ったり
- まとめ
- 綿密な計画を立ててシナリオを完成させる
- 70%のモチベーションを保つことを意識する
グラフィック編(ぬい氏)
- イベント絵
- 1ヶ月間を有効に使おう
- 長期間やってると、1ヶ月この分量終わらせないといけないというのが大体出てくる
- ラフ、線画、彩色3つの作業を考える
- 月〜金で1枚。土日で1枚。1月で八枚だったのを、ラフを土日の休日にまとめて書くことで、1月9枚に増やした
- 1ヶ月間を有効に使おう
- 背景
- 背景写真を撮影してトレースし、効率的に進めることを考えた
- とってきた写真をPCで取り込み、消失点などパースを取りつつ、要らないような小物類を除く
- 立ち絵
- どうしたら多くの立ち絵差分を作成できるか
- 徹底的にキャラのイメージを膨らます。(キャラが固まっている必要がある)
- シナリオを見ながら「ここではこんな表情なんだろう」というのを考え、メモしていく
- どうしたら多くの立ち絵差分を作成できるか
- 差分作りのコツ
- 口・眉・瞳がそれぞれ違うだけで印象が違うので、パーツ化して組み立てていくと作業が減らせる。27通り
講演者の方が用意してきたパワポが、文字が小さい上に水色とか黄色の文字だったり白縁取りでポップなフォントだったりで、ほとんど読み取れなかったのであまりメモをとれなかった・・・
凝ってるのはいいけど、スクリーンに写して講演するということをもう少し意識して欲しかったかな
世界征服を狙うO-GAMES の野望
- 神江豊氏、GARUDO氏
- インディーズゲームディベロッパーO-GAMES氏
- http://o-games.info/
ほとんど宣伝だったように思える。馬鹿らしくてメモする気が起きなかった
どんな団体なのかは、↓のリンクでも見て下さい
http://www.4gamer.net/games/100/G010096/20091225094/
効率よく短期間でテキストアドベンチャーを作成する方法
- 飯島多紀哉氏
- 七転び八転がり
- http://takiya.jp/78/
- ゲーム作りは全然難しく無い!
- 時間を掛けてやるのはいいことだけど、モチベーションを保つのが難しい
- 皆さんモチベーションを保とうと努力されていますが、自分達は全く逆
- 商業で何年もやるとどんどんクソゲーになっていく。3ヶ月が勝負
- シナリオとスクリプトを書けばノベルゲームは作れます!
- 絵はどうしようかな、音楽はどうしようかな、演出はどうしようかな。こういうことを色々考えるとどんどん膨らんでいく
- でもシナリオとスクリプトだけじゃ寂しいよ
- 演出
- システムプログラム(セーブ・ロード・テキストスキップなど)
- 背景
- 音楽
- キャラ絵
- イベント絵
- 声(なくてもいい)
- 1人で作る場合には自問自答だから良いが、多人数ではそうはいかない
- 多人数で作る上で重要なことは何か。「全員が全員の能力をしっかり把握する」
- 結構、みんな自己申告だったりする。その人が本当に出来ることを全員が把握し合う
- そうすると会議も非常に早く済む
- それをまとめる人間が必要。すごい才能を持った人間が集まっても、ひどいプロデューサーだとプロジェクトが終わる
- 能力というのは上手さではない。まずは気持ち、気心
- そのあたりができない人と組むと大変なことになる
- 1週間で出来る量をしっかり話し合う
- たまにいる「1日3枚書けるから1月で90枚かけるよ!」こういう人はマズい
- 1日1体キャラクターデザインを書けない人はヤバい。逆に書ける人は頼りになる
- 上手い人はゴロゴロ居る。問題はスピード。1週間もかけられては困る
- プログラマ・スクリプタの場合は、経験が無いと能力は分かりづらい
- ツールを自作できる人間であれば間違いなく問題ない
- ソースは汚い人よりもきれいな人のほうがいい
- スクリプタは、演出をどこまでできるのかを、実際に「見せて」もらいましょう
- ルート分岐やフラグ、エンディングなども事前にしっかり考えておく
- スケジュールをしっかり立てる
- 俺らのゲームは規模がでかいから1年後が完成だよねー
- →絶対挫折する。早いほうがいい!
- ゲームを作ろうと決めた期間の3分の1は、必ず問題が起こると考えて予定を開けておくこと。予備期間をちゃんと取る
- 1週間あったら2日は休む。余力を持ったスケジュールを組む
- 最初の一週間は日報を出させる。そうすることで、誰がダウトか分かる。思った以上の実力を持っている人も分かる
- 全員が互いのことを信頼し合うことが大事
今回も飯島さんはすごく面白かった。例えも分かりやすいし。話術なんだろうな。
それにしてもなんでスティッチという設定でしゃべってたんだろう(笑
Artemis Engine で作るiPhone用ゲーム
- Mikage
- IES-Net.com
- http://www.ies-net.com
- Artemis Engine について
- 現在インターネット上では公開していない
- インターネット上で公開すると、かなりの量のメールが来て対応するだけで大変になるので、ある程度Q&A が充実するまではメールを送ってくれた人にのみ公開
-
- 現在40サークルに提供している。私の知る限り、iPhone上の同人ゲームはほぼ全てAltemis Engine 対応
懇親会で触れる機会があったので弄ってみた感じ、二本指タッチでメニュー画面。3本指タッチでスキップ。上方向に指をスライドさせることでバックログ閲覧。
とインターフェース面もかなり良い出来だった。これはなかなか面白いと思う。
短編ノベル制作のテクニック-ライティングからコミュニケーションまで
- Club氏
- Team Eye Mask
- http://www.team-eye-mask.com/
何故同人ノベルゲームは完成しないのか
- 作品の規模と開発力の規模がマッチしていない
- プロジェクトが長期化すればするほど、失敗するリスクが高まる
- モチベーションの維持の難しさ
- 必要素材の多さ
- メンバーの増減
- 短編制作の利点
- 連作の1話や体験版と同じ規模で完成品が作れる
- 短編制作の課題
- 長編がスタンダードだからこそ、短編であることに意味のある作品である必要がある
- 短く面白いストーリーの難しさ。物足りないと感じやすい
短編作品の制作と各コミュニケーション
- 締切の設定
- 少ない素材で成立する世界観を作る
- 少人数かつ限定された空間を舞台にする
- 素材利用の例
- 窓に写ったキャラを少しずつずらしことで、立ち絵のようなバリエーションのある1枚絵に。
- 女の子が手前にいて、背景にロボットがいるような1枚絵
- フォーカスを女の子に当てたり、ロボットに当てたりと切り替える
- 空の色や、光の当たり方を変えるだけでも違って見える
- 宣伝とコミュニケーション
- 一般向け同人ノベルゲームでは、ユーザーも制作者だったり、ニュースサイトやレビューサイトなどを運営するコアなファンだったりして、消費しているというよりは参加しているという感覚が強い
- こういった方々と一緒に作品を作ることで、自然と二次宣伝などで作者と作品が広がっていく
-
- Webラジオの活用
- 作品ではなく作家や制作方法にフォーカスを当てたラジオを配信することで、制作者の横のつながりを広げる
- Webラジオの活用
-
- SNSなどのコミュニティサイトの活用
- ToMiCoなどの同人作家向けコミュニティサイトを活用
- サークルメンバの拡大やサークルのファンを増やすきっかけに
完成品を作るということ
- 未完成の作品はどんなに良く出来た体験版だとしても評価はされない
- 未完成品としてリリースしたものは、良し悪しは別としても一定の評価を得ることは出来る
- 評価=次回へのモチベーション
- ノウハウは作品制作から生まれ、ノウハウだけでは作品は生まれない
- 完成品を創るということは自分達のノウハウを創るということ
- 短編制作を通して、完成させるということを体験して下さい
- まずは、高望みをせず自分の作れる範囲のもので、出来る限りの完成品を